心臓を貫かれて マイケル・ギルモア
「死刑執行人の歌」を読んで、無性に再読したくなった。この本が出た頃、村上春樹訳ということで読んだのだけど、その時は「アメリカの犯罪記録」ぐらいの印象しかなかった。自分とは遠く離れた世界の話と思って読んだ記憶。ほとんど印象に残らなかった。あれから10年たって今読むと、悲しいのと切ないのと怖いのとで気持ちがごちゃごちゃする。村上春樹が言うように「ある種の精神の傷は、一定のポイントを越えてしまえば、人間にとって治癒不能なものになる。それはもはや傷として完結するしかないのだ。」ということだ。恐ろしいまでの暴力の連鎖。同じ親から生まれた、フランクJr.・ゲイリー・ゲイレン・マイケルの4人兄弟の辿った道筋。ある者は法を犯し、ある者は痛みを抱え、またある者は家族から逃げようとする。そして、その両親さえも決して子供達を愛さなかったわけではないという事実。今も世界中のそこここで起きているであろう、この地獄のようなクロニクル。私が一番心に残った個所は「家族は善なるものではない」というくだり。家族は愛すべきものだし、そこから逃げ切れるものではないけれど、決して最上のものではない。私もそう思う。